問1 解説
Glioblastomaをはじめとするびまん性星細胞系または乏突起膠細胞系腫瘍の遺伝子発現や変異に関して正しいものを2つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 脳幹部に存在しH3 K27M変異を認めているとしても、組織学的にGlioblastomaの所見を認めれば、Glioblastomaと診断する。
B. IDH1/2遺伝子変異を認めず組織学的にGlioblastomaと診断される場合、TERTプロモーター領域の変異を高率に認める。
C. 遺伝子発現プロファイル分類のProneural型において、MGMTプロモーター領域のメチル化は、Glioblastomaの治療効果の予測因子となる。
D. びまん性星細胞系または乏突起膠細胞系腫瘍でIDH1/2変異を認める場合、CDKN2A/Bの同型接合型欠失はWHO Grade4に相当する悪性所見とされる。
E. 腫瘍治療電場療法の治療効果は、MGMTプロモーター領域のメチル化に相関することが示されている
- 【正解】
- B,D
- 【解説】
- A. 脳幹部をはじめ正中部に存在しH3 K27M (ヒストン3.3および3.1蛋白の27番アミノ酸であるリジンがメチオニンに置換)変異を認める場合は、びまん性正中部神経膠腫 (Diffuse midline glioma、H3 K27M-mutant、WHO grade 4)と診断される。
B. Primary Glioblastomaと考えられてきた腫瘍ではIDH1/2 (イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)変異を認めず、TERT (テロメラーゼ逆転写酵素)プロモーター領域の変異、EGFR (上皮成長因子受容体)の増幅,第7染色体(PDGFR (血小板由来成長因子)やEGFR遺伝子をコード)及び第10染色体 (PTENやTERT遺伝子をコード)を高率に認めるとされている。
C. がんゲノムアトラス (TCGA : The Cancer Genome Atlas)による成人Glioblastomaの遺伝子発現プロファイリングでは、Proneural・Neural・Classical・Mesenchymalの4群に分類しており、MGMT (O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ)プロモーター領域のメチル化はClassical型でのみ治療効果 (アルキル化剤に対する反応性)の予測因子とされている。
D. Secondary Glioblastomaと考えられてきた腫瘍ではIDH1/2変異とともに核内ATRX (X連鎖αサラセミア/精神遅滞遺伝子)発現の欠損を認め、組織学的な壊死や微小血管増生といった所見の他に、CDKN2A/B (サイクリン依存性キナーゼ阻害2A/B)の同型接合型欠失が予後不良因子として注目されている。
E. 腫瘍治療電場療法の治療効果は、MGMTプロモーター領域のメチル化に相関することが示されている。
問2 解説
Glioblastomaに対する治療に関して正しいものを1つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 初発Glioblastomaに対する術中MRIを用いた可及的摘出は、前向き臨床試験で生存改善に有効性が示されている。
B. 初発Glioblastomaに対するアミノレブリン酸を用いた手術摘出は、前向き臨床試験で完全摘出の割合が増加することが示されている。
C. 初発Glioblastomaに対するBCNU wafersの摘出腔への留置はTemozolomideを用いた放射線化学療法への上乗せ効果が前向き臨床試験で示されている。
D. 初発Glioblastomaに対する放射線治療として、分割照射に加えて定位照射を追加することの有用性が前向き臨床試験で示されている。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法は、手術摘出度に応じてその上乗せ効果が高いことが、前向き臨床試験で示されている。
- 【正解】
- B
- 【解説】
- A. 初発Glioblastomaに対する術中MRIを用いた可及的摘出は、摘出度の増加に寄与をしていることが後ろ向き研究で示されているが、生存改善への多変量解析での寄与は示されていない。
B. 初発Glioblastomaに対するアミノレブリン酸を用いた手術摘出は、前向き臨床試験で完全摘出の割合が増加したことが示された (ALA-glioma study)が、全生存率の改善への寄与については示されなかった。
C. 初発Glioblastomaに対するBCNU wafersの摘出腔への留置はいくつかの後ろ向き研究で有効性が示されているが、Temozolomideや放射線治療への上乗せ効果は前向き臨床試験では示されていない。
D. 初発Glioblastomaに対する放射線治療において、分割照射への定位照射の追加は前向き臨床試験で上乗せ効果がないことが示されている (RTOG 93-05)。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法の効果は、前向き臨床試験において手術摘出度との関係なくその有用性を認めた (EF-14)。
問3 解説
Glioblastomaに対する治療に関して正しいものを1つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 初発Glioblastomaに対するTemozolomideを用いた維持化学療法は、投与を長期継続することの有効性が、前向き臨床試験で示されている。
B. 初発Glioblastomaに対するTemozolomideの投与量を増量する変法は、前向き臨床試験で有効性が示されている。
C. 再発Glioblastomaに対するBevacizumabを併用した放射線再照射は、Bevacizumab単独療法と比較して無増悪生存期間の延長を認めた。
D. 再発Glioblastomaに対するNivolumabを用いた治療は、Bevacizumabを用いた治療と比較して、前向き臨床試験で良好な成績が示されている。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法の有用性を確認した前向き臨床試験において、再発Glioblastomaに対する前向き臨床試験結果に基づき、初回再発の時点で使用中止が規定されていた。
- 【正解】
- C
- 【解説】
- A. 初発Glioblastomaに対するTemozolomide併用放射線治療に引き続いての、維持化学療法については前向き臨床試験では6コース以上の継続の有効性はMGMTのメチル化に関わらず示されていない (GEINO 14-01)。
B. 初発Glioblastomaに対するMGMTの枯渇期間を延長させることを企図して行われたTemozolomideの投与量を増量する変法は、前向き臨床試験では有効性が示されなかった (RTOG-0525)。
C. 再発Glioblastomaに対するBevacizumabを併用した放射線再照射は、Bevacizumab単独療法と比較して無増悪生存期間は延長されたが、全生存期間の延長は認められなかった (RTOG-0825)。
D. 再発Glioblastomaに対するNivolumabを用いた治療は、Bevacizumabを用いた治療と比較して有効性は示されなかった (Checkmate 143)。なお、初発Glioblastomaに対するNivolumabを用いた治療は、MGMT非メチル化症例に対する放射線治療及びNivolumabと放射線治療及びTemozolomideの比較試験 (Checkmate 498)、MGMTメチル化症例に対する放射線治療及びTemozolomideにNivolumabの上乗せ効果を見る比較試験 (Checkmate 548)が行われたが、いずれも生存期間の延長は認められなかった。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法の有用性を確認した前向き臨床試験では、初回再発では治療継続の選択は可能で、2度目の再発までは腫瘍治療電場療法の使用が許容されていた (EF-14)。
問4 解説
高齢者のGlioblastomaに対する治療について正しいものを2つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 65歳以上の初発Glioblastoma 患者において、MRIでのGadolinium造影病変の全摘出は予後に寄与することがコホート研究で示されている。
B. 70歳以下の成人初発Glioblastoma患者を対象とした放射線治療及びTemozolomideによる治療に関する第Ⅲ相臨床試験の副次的解析においては、年齢によるTemozolomideの上乗せ効果の変化は認めなかった。
C. 高齢者の初発Glioblastoma患者に対する放射線治療では、寡分割照射が通常分割と比較して非劣勢であることが、前向き臨床試験で示されている。
D. 日常活動度が保たれている65歳以上の初発Glioblastoma 患者において、放射線治療にTemozolomideを加えることは、MGMTプロモーター領域のメチル化に関わらず予後を有意に改善することが、前向き臨床試験で示されている。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法の前向き臨床試験では、高齢者(65歳以上)ではその上乗せ効果が乏しいとされる。
- 【正解】
- A,C
- 【解説】
- A. 65歳以上の初発Glioblastoma 患者においても、MRIでのGadolinium造影病変の全摘出は全生存期間の延長に寄与することが、コホート研究により示されている。
B. 放射線治療及びTemozolomideの有効性を示した前向き臨床試験において、年齢層別の副次的解析において高齢になるほどTemozolomideの上乗せ効果は低下を認めた。
C. 高齢者の初発Glioblastoma患者に対して、成人における標準的な放射線治療である60Gy30回照射と比較して、40Gy15回照射や34Gy10回照射といった寡分割照射が、いくつかのデザインの前向き臨床試験で非劣勢が示されている (CE6)。
D. 高齢者の初発Glioblastoma患者においても、忍容性が望める日常活動度であればMGMTのメチル化の有無に関わらずTemozolomideを放射線治療に加えることの有用性が、前向き臨床試験で示されている (CE6)。
E. 初発Glioblastomaに対する腫瘍治療電場療法の前向き臨床試験では、65歳以上でも年齢に関わらず上乗せ効果を認めている (EF-14)。
問5 解説
WHO脳腫瘍分類におけるGlioblastomaの亜型に関して正しいものを2つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. Epithelioid glioblastomaはGlioblastomaと比べて若年に多い。
B. Giant cell glioblastomaはTP53の変異を多くに認める。
C. GliosarcomaはBRAFV600Eの変異を多くに認める。
D. H3.3 G34R/V変異を伴う神経膠腫ではIDH1/2遺伝子の変異も存在する。
E. 腫瘍治療電場療法の前向き臨床試験ではGlioblastomaの亜型は含まれていない。
- 【正解】
- A,E
- 【解説】
- A. WHO脳腫瘍分類で紹介されているGlioblastomaの亜型は、Giant cell glioblastoma、Gliosarcoma、Epithelioid glioblastomaがある。Giant cell glioblastoma、Epithelioid glioblastomaはGlioblastomaと比較して若年に多く発生するとされている。
B. Giant cell glioblastomaはIDH1/2 (イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)野生型Glioblastomaの亜型であるが、TERT (テロメラーゼ逆転写酵素)プロモーター領域の変異やEGFR (上皮成長因子受容体)の増幅を認める頻度は低く、TP53遺伝子の変異を多くに認める。
C. GliosarcomaはIDH1/2遺伝子野生型Glioblastomaの亜型であり、Glio- blastomaの形態を示す成分と肉腫sarcomaの形態を示す成分とが混在している。遺伝学的にはIDH1/2野生型Glioblastomaと類似しているが、EGFRの増幅を認めることは稀である。BRAFV600Eの変異 (BRAF遺伝子のコドン600のバリンがグルタミン酸に代わる点変異)はEpithelioid glioblastomaにおいて多く認められる。
D. H3.3 G34R/V変異(ヒストン3。3蛋白の34番アミノ酸であるグリシンのアルギニンまたはバリンへの変異)は、小児や若年の大脳半球に出現するIDH1/2野生型神経膠腫で認められるものがある。核内ATRX (X連鎖αサラセミア/精神遅滞遺伝子)発現の欠損とTP53遺伝子の変異を多くに認め、予後はIDH1/2野生型よりは長いもののIDH1/2変異型よりは短いとされている。
E. 腫瘍治療電場療法の前向き臨床試験 (EF-14)では数例 (低悪性度gliomaまたは診断不十分)を除いて病理学的にGlioblastomaと診断された症例が対象となっており、亜型は含まれていないとされている。
問6 解説
分裂中の細胞が 腫瘍治療電場療法によって阻害される2つの物理的プロセスはどれでしょうか?正しいものを1つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 誘電泳動現象および双極子配列
B. 腫瘍細胞の静電容量および膜の透過性
C. 誘電泳動現象および膜の脱分極
D. イオン化流体の誘電特性および電気泳動移動度
- 【正解】
- A
問7 解説
Glioblastomaの遺伝子発現や変異に関して正しいものを2つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. 膠芽腫細胞を阻害するには、できるだけ低周波数を用いる。
B. 膠芽腫細胞を阻害するには、できるだけ高周波数を用いる。
C. 膠芽腫細胞を阻害する適正周波数は200kHzである。
D. 膠芽腫細胞の阻害は電場の強度のみに依存し、周波数は関係ない。
- 【正解】
- C
問8 解説
EF-14臨床試験最終解析において、腫瘍治療電場療法(以下、オプチューン®)とTMZ併用治療群の患者の方に1年から5年生存率で有意差が見られました。オプチューン®とTMZ併用治療群の5年生存率を1つ選んでください。
- 【選択肢】
- A. オプチューン®+TMZ 8% vs. TMZ単独 3%(P=0.028)
B. オプチューン®+TMZ 13% vs. TMZ単独 5%(P=0.028)
C. オプチューン®+TMZ 24% vs. TMZ単独 16%(P=0.021)
D. オプチューン®+TMZ 43% vs. TMZ単独 30%(P=0.001)
- 【正解】
- B
問9 解説
EF-14治験において、腫瘍治療電場療法(以下、オプチューン®)機器に関連した安全情報として正しいものを全て選んでください。
- 【選択肢】
- A. 最も一般的な有害事象は、医療機器装着部位の反応、頭痛、痙攣、鬱状態であった。
B. 最も一般的な有害事象は、血小板減少症、貧血、便秘、嘔吐、疲労だった。
C. 最も一般的な有害事象は、医療機器装着部位の軽度から中等度の皮膚有害事象だった。
D. TMZ単独治療と比較し、全身性の重篤な有害事象発生の有意な増加はなかった。
- 【正解】
- C,D
問10 解説
腫瘍治療電場療法(以下、オプチューン®)においてINEトランスデューサーアレイ下に発生した接触性皮膚炎を治療するために適切なものを全て選んでください。
- 【選択肢】
- A. 抗菌薬軟膏
B. 強力な局所コルチコステロイド
C. スルファジアジン銀
D. 症状に応じて、専門医に照会する
- 【正解】
- B,D
問11 解説
腫瘍治療電場療法(以下、オプチューン®)の使用における皮膚有害事象の管理で適切なものを全て選んでください。
- 【選択肢】
- A. INEトランスデューサーアレイを、ゆっくりと頭皮から取り外す。
B. 頭皮を乾燥させてから、軟こう(コルチステロイド軟こう又は抗菌薬軟こう)を塗布する。軟こうを塗布した後、そのまま15~30分待ちふき取る。
C. 刺激の強いシャンプーで頭皮を洗う。
D. 触知するプレート等の真上にセラミックディスクを配置しないようにする。
- 【正解】
- A,B,D